抗がん剤TS-1のメカニズム

先ほどもお話したように、1999年から使われている大鵬薬品工業株式会社の抗がん剤、「TS-1」は経口抗がん剤(服用できる薬)として、抗がん剤治療では一般的な薬剤です。
この薬はがん細胞を攻撃し、また副作用を少なくするよう考えて開発された薬です。
ちょっと難しいとは思いますが、この抗がん剤TS-1のメカニズムを簡単にお話しましょう。
まず、TS-1の中の成分、テガフールが肝臓において5-FUに変化します。
そしてそれを血中に放出させます。
また他の成分、ギメラシルが、その放出した5-FUが分解することを妨げ、血中濃度を上昇させることで、がん細胞を攻撃する力を発揮させます。
TS-1のもう1つの成分、オテラシルカリウムが、がん細胞を攻撃する5-FUが同時に起こしてしまう副作用としての嘔吐や悪心、下痢、または食欲不振などの、主に消化器の症状を軽くします。
こうしてがん細胞を攻撃する力を持ちながら、その副作用を軽くすることで、患者が長い期間、この薬を飲み続けられるように開発したものです。
今でも、患者さんの体の負担を少しでも軽減するため、新しい薬の研究、開発は日々、進化しているのでしょうね。
抗がん剤TS-1は、どのタイプのがんの抗がん剤治療に使われているでしょうか?
それは、頭頸部がんを始め、非小細胞肺がん、また、胃がん、結腸がん、直腸がんの抗がん剤治療に使われています。
それに手術不能の乳がんや、再発した乳がん、膵がん、胆道がんの抗がん剤治療にも使われており、今後も更に適応するがんが増えると期待されています。

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